貝がら千話

モノ・ホーミーの貝がら千話

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

第21夜「風景のなかの人々」

貝がら千話 第21夜「風景のなかの人々」 (二〇一九年二月二六日) 「そこで何をしていらっしゃるのですか。」「わたしですか。」「ええ、あなたです。どうもこんにちは。」「どうも。いや、何というわけではないのですが。」「そうですか、ずうっと、そちら…

第12夜「首絞め鳥の伝説」

貝がら千話 第12夜「首絞め鳥の伝説」(二〇一九年二月十七日) 動物園で二羽の鳥が死んだ。二羽は長い首がぐるぐるに絡まった状態でお互いを抱きかかえるようにして死んでいるところが発見された。動物園は、これを何者かによる悪質ないたずらではないかと…

第9夜「一三〇〇人の同僚と女王陛下の寝所」

貝がら千話 第9夜「一三〇〇人の同僚と女王陛下の寝所」(二〇一九年二月十四日) わたくしのつとめは女王陛下のお支度をお手伝いさせて頂くことでございます。毎朝まだ暗いうちに一三〇〇人の同僚と真っ暗なバスに揺られて、女王陛下の寝所へ向かいます。…

第3夜「旅の王子」

貝がら千話 第3夜「旅の王子」(二〇一九年二月八日) とりわけ王子を失望させたのは、人間というものが皆さして違わないということだった。 王子は幼少の頃より世界中、古今東西のあらゆる物語に親しんできたが、それらの物語によると世の中というものはど…

第2夜「駅で話しかけてきた老人の話」

貝がら千話 第2夜「駅で話しかけてきた老人の話」 (二〇一九年二月七日) あなた随分お疲れのようですね、と、突然話しかけてきた老人は何を断るでもなくホームのベンチに腰かけていたわたしの隣にどっかりと腰を降ろした。わたしは老人の問い掛けを無視し…

第1夜「あなたの種、売ります」

貝がら千話第1夜「あなたの種、売ります」 なるほど、あなたはご自分が何者なのかわからなくて困っておられる、そういうわけですね。ええ、わかります。もちろん記憶を失って名前がわからなくなってしまったわけでも、生まれた場所やご家族のことを忘れてし…