貝がら千話

モノ・ホーミーの貝がら千話

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

第69夜「気のいい少年」

第69夜「気のいい少年」 (二〇一九年四月十五日) 少年はいつもご機嫌だった。どんな時もニコニコと楽しそうな少年は、しばしば嫌がらせを受けた。あいつ、あんなに能天気にして、何の苦労も知らないに違いない。いいご身分だな。 実際その通りだったし、嫌…

第61夜「花と石」

第61夜「花と石」(二〇一九年四月七日) 人の話を聞いて綺麗な石を作ることができる少年がいた。話す人の手を片方の手で握りながらその人の話を聞くと、話が終わったとき、少年のもう片方の手には綺麗な石がひとつ握られていた。この石を握るとそのときの話…

第57夜「お元気そうで何よりです」

第57夜「お元気そうで何よりです」(二〇一九年四月三日) 「お元気そうで何よりです。」 はがきには、ただこれだけ書かれていた。何の変哲もない普通の白いはがきで、宛名面には男の住所、名前。左上に切手が貼られ、消印が捺されている。ただし差出人の住…

第44夜「添い寝」

貝がら千話 第44夜「添い寝」(二〇一九年三月二一日) 夜、眠っていると布団の中にいろいろなものが勝手に入ってくる。はじめは猫だった。 眠っているときに何かふわふわとした柔らかく暖かいものが肌に触れて、びっくりして飛び起きた。布団をめくると猫が…

第40夜「浄化する男」

貝がら千話 第40夜「浄化する男」(二〇一九年三月十七日) 男は自分のなかのさまざまなよくない性質を恥じ、それらをぜひとも改善したいと考えていた。そしてとてもよい方法を発見し、日々実践した。 その方法とは、赤信号の交差点を目を瞑って走り抜けると…

第39夜「腹話術師の友人」

第39夜「腹話術師の友人」(二〇一九年三月十六日) 腹話術師である男は、窮地に立たされていた。彼の呼び掛けに相棒が全く反応を返してよこさないのである。今までにも時折返事をしないことはあった。眠っていたりだとか、機嫌を損ねていたりだとか。しかし…

第30夜「アトリエの夜」

貝がら千話 第30夜「アトリエの夜」(二〇一九年三月七日) アトリエにいるときは、とにかく真っ暗にだけは気をつけなければならない。アトリエはわたしにとってどこよりも親密な、心安らぐ空間である。物心つくよりずっと前から、わたしはここで多くの時間…

貝がら千話について

貝がら千話について モノ・ホーミーについて 貝がら千話について 貝がら千話はモノ・ホーミーによる絵とお話のプロジェクトです。 まずはじめに一枚の絵を描き、それからお話をひとつ書くという方法で、2019年2月6日から2021年11月1日までの千日間、一日ひと…